Middle Tempo Magic

一巻目は主人公の磐音のめちゃ強いけど
春風駘蕩とした人柄が良いなあと感じつつも、
それ以外がちょっと弱いかなあとも。

が、読み進めるうちに筆も乗ってきまして
中盤には磐音流世界観がバッチリ構築されて来た感があって
押すに押されぬ名作と言えるのではなかろうかと。

私が読んだ事がある時代劇っていうと
鬼平と剣客商売とかの池波正太郎がほとんどで
あれらは良くも悪くもハードボイルドな男性像が魅力なんですよね。

どーんと男らしく、逞しく、食通だったり、遊び上手だったり、
粋でダンディーで、ちょっと強引で。
いかにも、俺について来い！ という感じ。
生粋の江戸っ子である、池波先生そのものなのかも。

対する坂崎磐音はそれらともまたまた違う魅力。

ある時は貧乏長屋の住人。
ある時は深川の鰻割きの職人。
ある時は南町奉行所の頼れる同心(じゃないんだけど)。

って・・・
何やってんだかわかんないし掴みどころがない。

直心影流の達人でありながら、
作品中でもしょっちゅう用いられる表現で
「縁側で昼寝をする年寄り猫のように春風駘蕩」
として、とにかく穏やかだ。

こういうのは単にヘタレな私には
ハイレベル過ぎちゃって難しそうだけど
ちょっとは芯がある人にならないといけませんな。うん。

なにはともあれ、いやあ、面白かった。
早くも続きが楽しみですなあ。

ちなみに「居眠り磐音江戸双紙読本」に
読者アンケートの好きな登場人物ランキング（磐音除く)
がありましたが、私は由蔵とおこんさんのコンビが好きです。