Middle Tempo Magic

あらすじだけ4行で簡潔に書いてしまえば
そういうお話なんだけど、その実はというと

フヌケた日本を憂い叱咤してると言えばそうだし
人のココロの影を抉り取ったとも言えるし
綿密に練りに練られリアリティとディティールにこだわった
エンターテイメント作品とも言えるのだ。

上下1000ページ以上に及ぶ長編なだけに
色んな側面があるわけだけど、ひとつ確実に言えるのは、
作者の中で発芽した時の熱量が損なわれる事無く
ビンビンと伝わってくる、熱く濃ゆい作品だったなあと。

特にイイナと思ったのは、
北朝鮮の特殊部隊達が語り部として大きな役を担ってる点。
もちろん閉鎖された世界だから、時間をかけて取材を踏んだとはいえ
想像で書いている部分もだいぶ多かろう。
(その点はあとがきでも、作者自身、セルフツッコミを入れています)

それでも、そこが大事だと思いました。
他の各登場人物の内面に関してもだいぶページを割いてる。
しかもそれは、マジョリティとは対極の側にいる人たちの心の声だ。

誰だって、本人にとっては、これ以上なく等身大の
「リアル」を感じて生きてるわけで、一人一人に物語がある。
外部の世界での主人公かどうかは関係ない。

こういうのは、ハリウッドにゃ描けないんだろうなあ。
きっと、敵であるテロリストと、それに立ち向かう勇敢な青年達の
迫力のガン＆爆破アクション満載の感動の超大作！
って、下らない感じになってしまいそう・・・。

そんなわけで、これは良かった。
村上龍、名前だけ知ってる作品はたくさんあるから
ちと手を伸ばしてみようかしら。

あ、ちなみに、本作品は、指定は無いけどかなりR18なのでご注意です。