Middle Tempo Magic

何がすごいって、まず、出だしからのバイクチェイスがカッコイイ。
アラブの街中をオフ車で忍者ばりに屋根から屋根へジャンプとか壁歩きとかの
トライアル要素も満点の目あたらしい演出でバイク乗りにはもちろん
そうじゃない人にもポイント高いこと間違いなし。

上海の高層ビルの格闘シーンは真っ暗なガラス張りのフロアで
向かいのビルのネオンサインが戦う2人の姿を影絵のように映し出す幻想的な演出。
ネオンを受けてクリスタルのように輝くガラスも美しかった。

で、主人公のコードネーム007ことジェームズ・ボンドはといえば。
スパイの代名詞と言っても過言ではないその華やかな活躍で
名声をほしいままにした若くてイケイケだった頃はとうに過ぎ去り
今は身も心も疲れ傷つき衰えズタボロになったオールドドッグ(字幕では「古株」となってた)。

老体に鞭を打ちながら敵と、そして自分自身への宿命へと立ち向かう姿が描かれておりまして
ダニエル・クレイグがいい具合にシブく草臥れてる様がハマッていて
これはトレビアンだぜ！と思ったものです。

敵がアジトに使う無人島は長崎の軍艦島でロケを行なったそうで
最近無人になったという設定の割には廃墟化が進みすぎてるし
サーバ基地としては物理的に不自然な感じはするけど
細かい事をガタガタ言わせない異様な存在感があってナイス。


が、しかし。

その興奮も途中で大幅にトーンダウン。
あまりのトンデモシナリオに終盤は退屈で正直どうでもよくなってしまった。

今回の話は、かつてMI6(英国諜報局)のスパイだった男が
MI6の女ボス「M」に恨みを抱き復讐をしかけてくるというものなのだが
コンピューターハッキングを得意とする彼は、わざと捕まりMI6に収監される。

その際、トラップを仕込んだ自分のPCを押収させMI6がPCを解析しようとするとトラップが発動。
MI6のセキュリティシステムを解除して牢屋から脱出、M殺害をせしめん・・・
という作戦らしいのだが、通常であれば、そんなものがうまくいくはずがない。

というのも、胡散臭いPCをいきなりネットワークに接続するなんて
コンドームをしないで乱交するようなものだぜ・・・って、おっと例えが悪かった。
まあ、要するに危険極まりない非常識な行動なわけで。

と思ってたら、オイオイ・・・。
MI6が誇る天才科学者の「Q」博士。
自身の現われなのか単にフーリッシュなのか、いきなりLANケーブル刺しちゃったよ！

Q　「クッ、これは手ごわいシステムだ。パスワードが分からない・・・」
ボンド　「パスワードはこの廃駅の名前に違いない、打ち込んでみろ！」
Q　「わかりました！」

カタカタ・・・

プゥープゥープゥー！(けたたましく鳴り響く警告音)

Q　「た、大変だ、システムを乗っ取られた！」


・・・・。

というわけで、その結果、MI6内のセキュリティは全解除、敵は見事脱出に成功し
なんとかM暗殺は免れたものの、無関係な人を含め多数の犠牲者を出してしまう。

「私も年老いた。やはり、私は引退すべきなのかしら」

と、責任を感じ思い悩むMをボンドがすかさずフォロー。

「ボス、あなたの責任じゃありませんよ(ｷﾘｯ」

うん、その通りだね。実際、悪いのはボンドだよ！
ジジイのくせいに、ガールハントのノリで気安くウイルス感染させてるんじゃねえよ。

さらには、敵に捕まったときに自慢げに取り出した秘密道具が

「これが最新アイテム、発信機さ！」

だもんね。
もう、突っ込みどころが多すぎてギャグなのか本気なのかわからなくなってきた。
ハリウッド風の水戸黄門、暴れん坊将軍だと思えば自然なのだろうか。
せっかくのダニエル・クレイグだし、前半、あれだけ新しい007を感じさせたのだから
最後までシリアスにやってほしかったなあ。

まあ、でも全体的に安心して楽しめる作品だったかしら。
なんといってもやはりダニエル・クレイグのイイ男っぷりににシビレル(・∀・)!