Middle Tempo Magic

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あらすじはこんな感じ。

主人公の社本は、片田舎で貧乏熱帯魚店を営む冴えない中年男。
再婚相手は美人で超セクシーだけど愛は冷め切ってるし家庭的でなし。
そんな継母に反発して学生の一人娘は非行に走り、すっかり家庭崩壊の様相。

一方、同業のカリスマとして名を馳せる名物社長の村田サン。
村田と知り合った社本は、村田の明るい人柄に心を許し親しくなった矢先、
彼から高級熱帯魚の取引話を持ちかけられる。

弱気な性格の社本は、超胡散臭いと思いつつも
気が付いた時、毒蛇は深く深く喉元に噛み付いておりまして・・・。
愛娘と妻を人質に取られて、イカれた村田と村田の妻の言われるがまま
村田の裏の「ビジネス」の片棒を担がされ、共犯者にさせられてしまうのです。

妻や娘を盾に取られ、共犯にさせられているとはいえ
その気になれば、社本は警察に通報できたはずだけど、躊躇するばかり。

そして物語の終盤、社本がずっと目をそらし逃げてきた
自分の弱さを村田に突きつけられます。

人を騙して殺しもするけど、相手がヤクザだろうが警察だろうが
自分の力で解決して、成功者となってきた村田に対し
社本の家庭問題も現在の最悪の状況すらも
全てはウジウジして何も決められない社本自身に原因があり
望まなくとも己が招いた必然の結果なのだと。
極悪人のくせにとことん正論。

そして、ついに社本が爆発し、村田に反旗を翻す・・・。


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愛犬家殺人事件のことはよく知らなかったのだけど
映画を観た後に調べてみると、なるほど。
物語の大部分は実際の事件と酷似しています。

実在の事件とは、犬と熱帯魚の違い等はありますが
ペットの高額売買を扱う偽の投資話で大金を騙し取った挙句
ヤバくなったら被害者を殺してバラバラにしてしまい
第三者を脅して共犯者にしたて上げる筋書きは同じ。

劇中で村田が再三口にする 「ボディを透明にする」 とは
実際の事件でも犯人の元夫婦が、ほぼ完全に証拠が残らない形で
人を殺害し遺棄することを指して、そのように呼んでいたそうで、
鼻息まじりに風呂場で遺体を解体していたのだとか・・・。

さてさて。

非常にエキセントリックな内容でありながらも
冷静にみれば、お話自体の大筋は想像の範疇だし
特に最後に社本が自分の殻を打ち破るところなど
下手すりゃ失笑モンの既定路線でもあると思います。

それでも、心に突き刺さって目を逸らさずにいられないのは
やはり「最低でも極悪人」 を目指したという
村田役のでんでんの怪演が非常に大きいと思う。

それと狂気という部分では、連続殺人事件という部分以外に
怪しく艶かしい魅力でいっぱいのお姉さん達の存在も忘れられない。

誰一人としてマトモな人が出てこないって感じの作品の中においても
狂おしいほどの愛と支配への依存と渇望に著しく人間性を失ってる
黒沢あすか嬢はピカイチでした。

特に壮絶なラストで、「主人」の入れ替わりを素直に受け入れてしまう姿は
おぞましくもあり、いと哀れでもあり、哀れとは愛おしさと
両輪でもあるのだなあと感じさせる。

また、娘役の梶原ひかりサンがとても好みでよろしい。
小生意気でグレちゃってるけど、目力がぐーっと強くて健康的で純粋な感じが
ハマっていたと思います。

というわけで・・・

とことん残酷でグロいので注意が必要ですが
狂気とか妬みとか愛だとか、そんな人間の根底に流れる黒い水脈を
極限まで溜めて溜めて、だーんと決壊させたかのような
ハチャメチャな内容でありながらも
破綻させずに言いたいことは、きっちり力強く言っていて
納得させられてしまう映画でした。