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項羽と劉邦

なんだかすっかりバイクのブログになってますが・・・。

別にそういうわけじゃないんです、そんなわけで。
久しぶりに本の話で司馬遼太郎の「項羽と劉邦」。
何気に司馬遼太郎は初です。
古代中国史も漫画程度にしかほとんど知らなかったりする。

時は紀元前200年あたり。

秦の始皇帝が中国史上初の天下統一を果たすも
その極端な法治刑罰主義とワンマン体制やら
万里の長城に代表される土木工事しまくりの圧政が災いし
崩御と共に一代のみで再び戦乱の世へ。

で、その後、天を二分して覇権を争った二人の英雄
楚の項羽と、漢の劉邦の戦いを描いたお話・・・。

あ、上中下の3冊セットなので買うときに注意(苦笑)
先述の通り、司馬遼太郎センセイは初めて読みました。

私が池波正太郎が好きだと言えば、妹は司馬遼太郎が好きだという。
池波正太郎は良くも悪くもハードボイルド俺々調の中尾彬なのが
嫌いなんだそうだけど、読んでみてなるほど。
とても気持ちのいい、舌触りのいい文章を書く人だなあ、と思った。
インテリだけど嫌味っぽさがないところも、いいですね。


さてさて。

先ほど、二人の「英雄」と書いたが、この表現には少々語弊があって。

項羽は名家出身、武名も世に広く聞こえた百戦百勝の猛将。
堂々たる体躯だけでなく炎のように激しく情熱的な性格の持ち主。
絵に描いたような英雄、戦国無双野郎なわけです。

一方、劉邦はと言えば、田舎のドチンピラの出身なんですよね。
かといって、喧嘩が強いわけでもなく、字もろくに書けず。
お調子者で苦労や努力が嫌いで根性もなく臆病者で、
盗みたかりでフラフラ飲んだくれてるうちに、中年を迎えてしまう。

だけどどういうわけか、チンピラ時代から、劉邦の周りには人が集まってくる。
優秀な人材が彼を慕って集まってきて彼の為に一生懸命働いて
項羽にグダグダで百敗したあげく、結果的にはだいどんでん返し。
圧倒的実力差を覆して劉邦が項羽を打ち砕く、と。
え、英雄? これがかの高祖なの? みたいな(笑)


項羽も項羽で十分に漫画ちっくな人物なわけですが
劉邦もそれに劣らず漫画ちっくで、

「馬鹿だと思ったら、『超』が付く大馬鹿者だった」
「お人よし加減が底なし沼だと思ったら、マリアナ海溝よりも深かった」
「蛇だと思ったら竜でした」
「グーっといって、バーン!」

というような、得体の知れない度量の大きさと、
馬鹿のクセに、ここぞという時に、天才的な閃きをや決断力を見せる
エピソードの持ち主だったりする。
人の話をちゃんと聞き、人を見る目があって、お茶目で愛嬌いっぱい。
なんていうか、項羽が信長なら、劉邦はメイクミラクル、長島茂雄。

後書きに「人望とは何か?を極めつくした作品」
とあるように、ともかく人物像と人々のココロの機微だとか、
その中でも「誰が誰の事をどう思った」とか「この人の魅力はここで欠点はこれ」
とかいう話に、ものすごく力が入っているのが面白かったですね。

重要人物から脇役まで、すごい人物がいっぱいいるわけだけど、
どいつもこいつも、すごいと同時に、ほんとどーしよーもないなぁ・・・
って思わせられるのです。

立派な人物像というより、ダメダメな事によって際立つキャラ萌え像というか。
人間の持つ愛おしさとは、愚かしさとセットだなあとつくづく思う。

と、書いていたら、既に長いが、もっとすごく長くなりそうなので、
言いたい事はいっぱいあるけど、カットしよう・・・。
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