Middle Tempo Magic
人混みの中に埋もれ埋もれ
約束の地 グンマー(後編)
中二病全開な前回までのあらすじ。
25世紀初頭、地球から265万光年離れた惑星グンマーのケナシー山脈にあるオグシ鉱山へ降り立ったはずの救援部隊が目にしたのは、人類を遥かに凌駕する高度な先端文明の遺構だった。
なんと彼らは1600年後の世界へタイムスリップしていたのだ・・・。
(意訳:群馬県の毛無峠にある小串硫黄鉱山跡へツーリングに行った)
◆◆◆◆◆
これだけの証拠を突きつけられてもまだ信じられないが、やはり僕達が時間の遭難者となってしまったことは事実らしい。
理由は定かではないが、サルファーマルエネルギーを利用した重力場位相偏移航法は、所謂ワープ、即ち時空間を捻じ曲げてショートカットする行為であるから、なんらかの外乱によって僕達は時間を飛び越えてしまったのだろう。
見た限りでは、この「未来人」達の築いた街は廃墟となって久しいようだが、少しでも詳しい情報を得るために、また微かな希望を求め、散策へ向かった。
僕個人としては、例え変わり果ててしまったといっても、ケンとリョウコ達の街を少しでも目に刻み付けておきたかったのだ。
石碑の地図を頼りに森を抜けると、突如、視界が開け、荒涼とした大地が姿を現した。
そこに生けとし生けるものは何もない。
ただ孤独を洗い流すかのように風が強く吹いていた。
発見した水貯蔵プラントを覗き込んで、思わず息を呑んだ。
プラントだと思った水面の下の空間に、広大な都市遺跡が沈んでいたのだ・・・!
一面を砂漠に覆われたこのオグシは、灼熱の夏とはうって変わり冬場は氷点下を下回る激寒の地となる。
そのためケンとリョウコの子孫達は年間を通して安定した地底に移り住んだのだろう。
「空を泳ぐ」魚達が、かつての繁栄の跡を静かに見守っていた。
◆◆◆◆◆
さらに奥へ進むと、何かはわからないが、朽ち果てた人工物が点在する地区へと出た。
1000年後も残っているスポーツとはなんだろうか?
そんな議論は古くからなされてきたが、その答えの1つはサッカーのようだ。
地球だけではなく遠く離れた銀河の果てであっても。
もうひとつの答えは意外なことにテニス。
サルファーを含む酸性土によってすっかり変色してしまっている。
サッカーゴールのあるグラウンドで25世紀の旧友に再会した。
僕達の時代にも土木現場で活躍していた小型重機(おかしな言葉だ)のネコグルマNG-01。
◆◆◆◆◆
「気をつけろ、サルファー流だ!」
ケビン隊長が注意を促す。
ここではサルファーで黄色く変色した土石流が度々発生する。
ケンとリョウコ達の開拓団を襲った規模災害も大規模地すべりで、200名以上の方が被害に遭われたと聞いている。
本来、我々はその復旧援助のために向かったはずなのだが、あれからどうなったのだろう。
向かいの斜面には幾歳月もの吹きさらしの風に耐えながら鉱山都市の遺跡が残っていた。
その荘厳な姿はまるでインカ帝国の天空都市マチュピチュを彷彿とさせる。
砂に覆われた脆い急斜面を下り坑道跡を望む。
今となっては想像するしかないが、当時は祖国の繁栄を支えて働く男たちの活力と希望で満ち溢れていたのだろう。
それを思うと厳粛な気分になった。
上空から見るとフラットに見えるオグシだが、山を切り開いて造ったため、実はかなりの斜面に台地が点在するような構造をしている。
脆く崩れやすい砂丘は、一度降りると蟻地獄のように這い上がるのに苦労する。
特に夏場は水の携帯を忘れると遭難必至だろう。
クレバスが稲妻のように大地を走り崖へと落ちていく。
◆◆◆◆◆
当然予見はしていたが、もはや地上にはいくつかの残骸を除き何もなかった。
一棟だけ原型を留めるシェルターも辛うじて屋根を残すのみだけだ。
何も手がかりは得られないまま、皆次第に無口で無感動になっていく。
それはまるでオグシの砂嵐が隊員達の心までもを荒野に変えようとしているかのようだった。
その空白と化した僕の心に突如、さざ波が起きたのを今も鮮明に覚えている。
Calling you...
赤錆びたメリーゴーランドが、連想させたのは、甥っ子のケニーと遊ぶケンとリョウコ達の姿。
うおおおおお・・・!
僕は号泣した。
もはや社会的繋がりを一切失ってしまった自分の人生に、何の価値があるというのか?
みんな、みんな、いなくなってしまった。
もう行こう・・・。
彼らのために墓標を建て、旧市街地区を後にした。
惑星グンマー。
ここは1600年後の地球から遠く離れた異星。
僕らは時の遭難者となった。
荒野の空に世界で最も残酷な月が首をもたげる。
もちろんその月は地球のそれではない。
◆◆◆◆◆
一説によれば人類の文明は30世紀頃には円熟期をとうに過ぎ、人間で言えば老年の時期に入り、やがて崩壊するのだという。
今、地球の人類は、同胞たちがどうなっているのか?
残念ながらそれを知りえる情報はここに残されていなかった。
しかし、他に行くあてはない。
例え人類が残っていなくても、生きねばならないのだ。
グンマー到着から6時間と数日後。
199名の隊員を乗せ、GSX-Rは地球を目指し、再び宇宙へと飛び立った。
宇宙船の窓から見えるグンマーが次第に小さくなっていく。
さらばグンマー、小串よ永遠なれ。
これはヤキイモー(サルファーマル燃料のペレット)。
このペレットから得たハイドロゲンサルファーガスはとてつもない異臭を放つが、高速宇宙艇に必要不可欠な膨大な熱量を発するのだ。
やがてGSX-R750号はグンマーの属するマンザ系の重力圏から離脱し、シガ・クサツ航路へと入った。
帰ろう、地球(テラ)へ・・・。
地球でGSX-R号と隊員達を待ち受けるのは何か。
彼らの旅は続く。
第一部 ~完~
映画「約束の地 グンマー」エンディングテーマ: Lisa / oath sign (背景にご注目下さい)
(C) 2013 約束の地 グンマー製作委員会
【目次】
約束の地 グンマー (予告編)
約束の地 グンマー (前編)
約束の地 グンマー (中編)
約束の地 グンマー (後編)
25世紀初頭、地球から265万光年離れた惑星グンマーのケナシー山脈にあるオグシ鉱山へ降り立ったはずの救援部隊が目にしたのは、人類を遥かに凌駕する高度な先端文明の遺構だった。
なんと彼らは1600年後の世界へタイムスリップしていたのだ・・・。
(意訳:群馬県の毛無峠にある小串硫黄鉱山跡へツーリングに行った)
◆◆◆◆◆
これだけの証拠を突きつけられてもまだ信じられないが、やはり僕達が時間の遭難者となってしまったことは事実らしい。
理由は定かではないが、サルファーマルエネルギーを利用した重力場位相偏移航法は、所謂ワープ、即ち時空間を捻じ曲げてショートカットする行為であるから、なんらかの外乱によって僕達は時間を飛び越えてしまったのだろう。
見た限りでは、この「未来人」達の築いた街は廃墟となって久しいようだが、少しでも詳しい情報を得るために、また微かな希望を求め、散策へ向かった。
僕個人としては、例え変わり果ててしまったといっても、ケンとリョウコ達の街を少しでも目に刻み付けておきたかったのだ。
石碑の地図を頼りに森を抜けると、突如、視界が開け、荒涼とした大地が姿を現した。
そこに生けとし生けるものは何もない。
ただ孤独を洗い流すかのように風が強く吹いていた。
発見した水貯蔵プラントを覗き込んで、思わず息を呑んだ。
プラントだと思った水面の下の空間に、広大な都市遺跡が沈んでいたのだ・・・!
一面を砂漠に覆われたこのオグシは、灼熱の夏とはうって変わり冬場は氷点下を下回る激寒の地となる。
そのためケンとリョウコの子孫達は年間を通して安定した地底に移り住んだのだろう。
「空を泳ぐ」魚達が、かつての繁栄の跡を静かに見守っていた。
◆◆◆◆◆
さらに奥へ進むと、何かはわからないが、朽ち果てた人工物が点在する地区へと出た。
1000年後も残っているスポーツとはなんだろうか?
そんな議論は古くからなされてきたが、その答えの1つはサッカーのようだ。
地球だけではなく遠く離れた銀河の果てであっても。
もうひとつの答えは意外なことにテニス。
サルファーを含む酸性土によってすっかり変色してしまっている。
サッカーゴールのあるグラウンドで25世紀の旧友に再会した。
僕達の時代にも土木現場で活躍していた小型重機(おかしな言葉だ)のネコグルマNG-01。
◆◆◆◆◆
「気をつけろ、サルファー流だ!」
ケビン隊長が注意を促す。
ここではサルファーで黄色く変色した土石流が度々発生する。
ケンとリョウコ達の開拓団を襲った規模災害も大規模地すべりで、200名以上の方が被害に遭われたと聞いている。
本来、我々はその復旧援助のために向かったはずなのだが、あれからどうなったのだろう。
向かいの斜面には幾歳月もの吹きさらしの風に耐えながら鉱山都市の遺跡が残っていた。
その荘厳な姿はまるでインカ帝国の天空都市マチュピチュを彷彿とさせる。
砂に覆われた脆い急斜面を下り坑道跡を望む。
今となっては想像するしかないが、当時は祖国の繁栄を支えて働く男たちの活力と希望で満ち溢れていたのだろう。
それを思うと厳粛な気分になった。
上空から見るとフラットに見えるオグシだが、山を切り開いて造ったため、実はかなりの斜面に台地が点在するような構造をしている。
脆く崩れやすい砂丘は、一度降りると蟻地獄のように這い上がるのに苦労する。
特に夏場は水の携帯を忘れると遭難必至だろう。
クレバスが稲妻のように大地を走り崖へと落ちていく。
◆◆◆◆◆
当然予見はしていたが、もはや地上にはいくつかの残骸を除き何もなかった。
一棟だけ原型を留めるシェルターも辛うじて屋根を残すのみだけだ。
何も手がかりは得られないまま、皆次第に無口で無感動になっていく。
それはまるでオグシの砂嵐が隊員達の心までもを荒野に変えようとしているかのようだった。
その空白と化した僕の心に突如、さざ波が起きたのを今も鮮明に覚えている。
Calling you...
赤錆びたメリーゴーランドが、連想させたのは、甥っ子のケニーと遊ぶケンとリョウコ達の姿。
うおおおおお・・・!
僕は号泣した。
もはや社会的繋がりを一切失ってしまった自分の人生に、何の価値があるというのか?
みんな、みんな、いなくなってしまった。
もう行こう・・・。
彼らのために墓標を建て、旧市街地区を後にした。
惑星グンマー。
ここは1600年後の地球から遠く離れた異星。
僕らは時の遭難者となった。
荒野の空に世界で最も残酷な月が首をもたげる。
もちろんその月は地球のそれではない。
◆◆◆◆◆
一説によれば人類の文明は30世紀頃には円熟期をとうに過ぎ、人間で言えば老年の時期に入り、やがて崩壊するのだという。
今、地球の人類は、同胞たちがどうなっているのか?
残念ながらそれを知りえる情報はここに残されていなかった。
しかし、他に行くあてはない。
例え人類が残っていなくても、生きねばならないのだ。
グンマー到着から6時間と数日後。
199名の隊員を乗せ、GSX-Rは地球を目指し、再び宇宙へと飛び立った。
宇宙船の窓から見えるグンマーが次第に小さくなっていく。
さらばグンマー、小串よ永遠なれ。
これはヤキイモー(サルファーマル燃料のペレット)。
このペレットから得たハイドロゲンサルファーガスはとてつもない異臭を放つが、高速宇宙艇に必要不可欠な膨大な熱量を発するのだ。
やがてGSX-R750号はグンマーの属するマンザ系の重力圏から離脱し、シガ・クサツ航路へと入った。
帰ろう、地球(テラ)へ・・・。
地球でGSX-R号と隊員達を待ち受けるのは何か。
彼らの旅は続く。
第一部 ~完~
映画「約束の地 グンマー」エンディングテーマ: Lisa / oath sign (背景にご注目下さい)
(C) 2013 約束の地 グンマー製作委員会
【目次】
約束の地 グンマー (予告編)
約束の地 グンマー (前編)
約束の地 グンマー (中編)
約束の地 グンマー (後編)
PR
この記事にコメントする
約束の地 グンマー(後編)
宇宙航路はクルマー小惑星群の帯。
テラ(寺←どこの?NTTドコノ)に導いてくれますね。
さらばグンマーよ。
いつか時空を抜け、現代に戻ったとき、また来よう。
テラ(寺←どこの?NTTドコノ)に導いてくれますね。
さらばグンマーよ。
いつか時空を抜け、現代に戻ったとき、また来よう。
- tkj
- 2013/10/19(Sat)22:24:32
- 編集
約束の地 グンマー(後編)
ブログ内検索
最新記事
(06/25)
(12/31)
(12/29)
(12/28)
(12/24)
最新コメント
[02/24 たまご]
[01/31 かじか]
[01/05 たまご]
[12/31 まさくん]
[12/31 tkj]
[12/31 まほん]
[12/30 たまご]
[12/30 tkj]
カテゴリー
カレンダー
アーカイブ
プロフィール
HN:
たまご
HP:
性別:
男性
職業:
SE@窓際系
趣味:
バイクとか本とかカメラとか
自己紹介:
バイク乗ったりうまいもん食ったり本読んだり写真撮ったり音楽聴いたり旅人に憧れれつつ人生迷子中だったり。
お問い合わせは wanito.kagekisuあっとgmail.com まで
お問い合わせは wanito.kagekisuあっとgmail.com まで