Middle Tempo Magic

「愛美は死にました。

しかし事故で死んだのではありません。

このクラスの生徒に殺されたのです。」

 

終業式のホームルーム。

物語は我が子を校内で亡くした中学校の女性教師の衝撃の告白から始まります。

 

級友の前で暴かれる犯人の正体。

そして復讐・・・。

 

教師から級友、犯人、犯人の家族それぞれの独白により

事件の全体像が次第に浮き彫りにされていくのだけど

同時に時間軸は過去から現在へと移り変わり

バタフライエフェクトよろしく誰も予想だにしない

とんでもない事態へと進展してしまう。

 

各々のキャラクター作りが本当に巧みで

デスマーチを突き進むお先真っ暗展開の中

生き生きしてしまっているから面白い。

 

真実というものは1つではなく見方によって姿を変えるものだ、

というのは常々思っていて、私の考え方のベースでもあるのだけど

(この説自体が矛盾をはらんでいるわけだが、その話はまたそのうち・・・)

各自の視点から見る事件の様相は大きく違うんですね。

 

この物語の内容は第三者から見た客観的事実ではなく
あくまで当事者による「語り」なので単なる感じ方や考え方の違いもあれば誤解もあり
はたまた自己弁護からの独りよがりとか、おそらく嘘も多分に織り交ぜられているので
何が本当なのか、実のところわからないことも多い。

その判断は読者自身に委ねましょうということか。

 

そして何が善で何が悪なのか。

衝撃のラストはホントに救いがなくて、でも、正直だなあとも思うんだけど

でも、これで良かったのか、でもでも・・・と複雑な気持ちにさせられました。

 

人の心をより深く、効果的に抉り傷つけるにはどうしたらいい？

 

思えばラストも含め、そんな行動原理が垣間見えてしまうような感じもするのです。
(登場人物がそう望んで行動しているかどうかは別で、結果的にってことね)

そう考えると、かなえ先生、なんて恐ろしい人なのだ。